子どもの足はすぐ大きくなるから、靴は大きめに限る…。
でも、それが間違いの始まりです!
ひざがしらやひじにスリ傷をつけて帰ってくる子どもを見るたびに、“なんでしょっちゅうころぶんだろう、徒競走も遅いし”、と心配されているお母さん。
そういえば、自分も子どものころは走ることは苦手で、よくころんだし、これはもう遺伝でしょうがないのかもしれない…。でも、そう思い込んであきらめてしまうのは、まだ早いのです。
もしかして、“子どもの足はすぐ大きくなるから”、“ぴったりな靴はきつく感じて子どもが嫌がるから”という理由で、子どもに買ってあげる靴は大きめのサイズを選んではいませんか?
ちょっと待って!
よくころんだり、走るのが遅かったりするのは、ぶかぶか靴が原因かもしれません。
しかも、大きすぎる靴は、もっと大きな問題を抱えています。
それは子どもが成長途中に、より大きなトラブルを招いてしまうかもしれない、ということです。
子どもたちは、すでに足にトラブルを抱えていた
データによると、なんと、子どもたちの47%の足に「浮き指(うきゆび)」が、70%に「内反小趾(ないはんしょうし)」が見られました。
それだけではなく、子どもたちの4%が、中高年の足のトラブルと思われていた「外反母趾(がいはんぼし)」を抱えていることがわかったのです。
しかも、甲高幅広とは言えないような甲まわり(足囲)のサイズが広く分布していることも分かりました。
日本人の足は3Eや4Eが主流で幅広が一般的、というこれまでの常識はなく、むしろEやDが多いなど甲まわり(足囲)が細めの傾向にあることが見えてきたのです。
「浮き指(うきゆび)」「内反小趾(ないはんしょうし)」とは?
ところで「浮き指(うきゆび)」や「内反小趾(ないはんしょうし)」とはあまり聞き慣れない言葉ですが、どういう状態なのでしょうか?
●「浮き指」は足の指が地面につかない状態。体重が「かかと」よりになります。
●「内反小趾」は小指が内側に曲がる状態。外側に踏んばれなくなります。
ころびやすい、かけっこが遅い、ということを心配していませんか?
実は、「浮き指」や「内反小趾」が原因でバランスが崩れやすかったり、足指がうまく使えず、地面を蹴る力が弱くなっている、ということが十分考えられるのです。
バランスの崩れをなんとか抑えようと無意識のうちに「カラダ」が踏ん張り、カラダのほかの部分に無理な力をかけることで、なんとか支えているんですね。

「浮き指」と「内反小趾」の実例を写真で見てみましょう。
「浮き指」
ハダシに なってもらい、フットプリンターという器具の上に立ってもらいます。 これは足裏の体重のかかり方をチェックするための器具なんです。
フットプリンターを使うと、体重が強くかかるところは色が濃く、弱くかかるところは色が薄く、かからないところは色のない状態になるので、足裏への体重のかかり具合がはっきり分かります。
※フローリングでは濡れた足あとからも判断できます。
左側の足は小指が接地しておらず、右側の足は親指以外が接地していない「浮き指」状態になっており、かかとに体重がかかっているのが分かります。
体重が後ろよりになっている上に、足指が地面をうまくつかめないので、歩くときのバランスが崩れやすくなります。
「内反小趾」
左側は正常なまっすぐの足。右側が典型的な内反小趾。
小指が内側に曲がっているのが分かります。
靴は、足のかたちを整える「いれもの」です
子どもの足はとてもデリケート。
成人の足は、足首とかかとをかたち作る7つの足根骨(そっこんこつ)でつくられているのに、 生後すぐの赤ちゃんには軟らかな骨が2つしか見られません。
1歳半頃には4個、4歳頃で6個、6〜7歳頃に7個が確認できます。
しかし、まだまだ「やわらかいまま」です。
骨が全部そろって完成するのは11歳頃で、さらに成長して大人の足になるのは18歳頃になるんですね。

子どもが成長する過程で、靴は足の形を正しく整える「入れもの」になります。子どものときに足のサイズに合った良い靴を履いているかどうかが、足に問題を抱えずに済むかどうかの分かれ道になります。 子どもたちの足が問題を抱える原因のひとつが、足に合わないサイズの靴を履いていることにあります。「内反小趾」はこうした靴を履き続けた結果といえるでしょう。
また「浮き指」は、合わない靴を履き続けることや運動不足で、アーチ(土踏まず)が十分発達しないことが原因で起こります。子どもたちが外で遊ばなくなり、家でテレビを見たりゲームをする時間が増えたことも、その理由のひとつと思われます。

サイズの合わない靴を履き続けているうちに、子どもの足は成長の過程で徐々に変形していきます。